株式会社ボイジャーの提供している『Romancer』は、Wordファイルなどから簡単に電子書籍フォーマット「EPUB 3」のファイルが制作・公開できるウェブサービスです。それがこのたび、販売委託などの拡張サービスも提供するようになり、魅力的なセルフパブリッシング・プラットフォームに生まれ変わりました。
無料で利用できるRomancerの主な機能
無料で利用できる魅力的な機能としては、以下の2点が挙げられます。
- 電子書籍の世界標準規格で日本語の縦書き表記などにも対応しているオープンフォーマットの「EPUB 3」が、Wordファイルなどから簡単に制作できる
- 「公開作品広場」で作品を無料公開でき、ブラウザビューワ「BinB Reader」を利用することで、特別なアプリ等がなくても誰でも簡単に読んでもらえる
制作ツールとしては、縦書き/横書きどちらにも対応しており、縦書き時2桁数字の縦中横指定、目次の自動生成、書誌情報(メタデータ)の追加と奥付作成、自動EpubCheckによる「正しいEPUB」の書き出し、ビジュアルエディタ(WYSIWYGエディタとHTMLソースを直接編集できるモードが切り替えられる)、表紙用画像を3D風に変換するツールなど、充分な機能を備えています。
なお、EPUBの制作機能と公開機能は別であり、RomancerはEPUBを制作・ダウンロードするためだけに利用して、「公開作品広場」には出さない、という使い方もできます。
「作品権利のお約束」には「すべて作者ご自身のものです。自動的に、勝手に、ボイジャーが出版/複製/販売する権利をもつようなことは一切ありません」と明言されており、Romancerで制作・ダウンロードしたEPUBファイルを別の場所で公開や販売することに何ら制限はありません。
制作方法は、以下の記事が参考になるでしょう。
ちなみにRomancerは、商業出版でも活用されています。ボイジャー発行の『ぼくらの時代の本』も、もちろんRomancerで制作されているそうです。
Romancerの有料支援サービス
今回新たに拡張された有料サービスのうち、個人が比較的気楽に利用可能なのは以下の4点です。別途、業務用の法人向けプランもあります。
- Romancerを経由し、複数の総合電子書店で本が販売できる
- 月間利用容量拡張(月間50MBの制限解除が有料・2015年7月以降)
- 電子書籍の制作委託
- オンデマンド印刷版の制作
この中でインディーズ作家にとって特に魅力的なのは「複数の総合電子書店で本が販売できる」点でしょう。少し詳しく掘り下げます。
複数の総合電子書店で本が販売できる「販売委託」サービス
- 販売委託対象電子書店はボイジャー直営の「BinB store」と、「iBooks Store」「Google Play ブックス」「Yahoo!ブックストア」「紀伊國屋書店ウェブストア」「楽天Kobo電子書籍ストア」「BookLive!」「Reader Store」「ブックパス」「eBookJapan」「honto電子書籍ストア」「達人出版会」「YONDEMILL」「Kindleストア」の14カ所
- 費用が発生するのは売れたときの販売委託手数料のみ
- 販売委託手数料はボイジャーへの入金額に対し20%で、希望小売価格からの換算で7%~18%と比較的低めに抑えられている
- ISBNコードがない作品には、ボイジャーが採番したものが自動で割り当てられる
- 販売部数は各書店からボイジャーに月次売上報告が送付された時点で確定するが、タイミングは書店により異なる(おおむね販売翌月から4カ月後とのこと)
- 入金は販売部数確定の翌々月末日
同じような販売委託をやっているサービスには「BCCKS」が挙げられます。
RomancerとBCCKSの販売委託対象電子書店比較
Romancer経由の印税率は、ボイジャーと配信先の秘密保持条項により一部が「56〜47.2%」と幅で表記されています。詳細が不明なため、明確な数字比較になっていないことをあらかじめご了承ください。
書店 | Romancer の印税率 |
BCCKS の印税率 |
BinB store(ボイジャー直営) |
72%
|
×
|
BCCKS(直営) |
×
|
70%
|
iBooks Store |
56〜47.2%
|
35%
|
紀伊國屋書店ウェブストア |
56〜47.2%
|
35%
|
楽天Kobo電子書籍ストア |
56〜47.2%
|
50%
|
BookLive! |
56〜47.2%
|
35%
|
Reader Store |
56〜47.2%
|
35%
|
eBookJapan |
56〜47.2%
|
35%
|
Kindleストア |
28%
|
25%
|
Kindleストア(独占配信) |
56%
|
×
|
Google Play ブックス |
56〜47.2%
|
×
|
Yahoo!ブックストア |
56〜47.2%
|
×
|
honto |
56〜47.2%
|
×
|
達人出版会 |
56〜47.2%
|
×
|
YONDEMILL |
56〜47.2%
|
×
|
ブックパス |
56〜47.2%
|
35%
|
BOOK☆WALKER |
×
|
50%
|
前述のように、Romancerで制作・ダウンロードしたEPUBファイルは別の場所で公開や販売ができるので、例えば「BOOK☆WALKER」だけ「BCCKS」で販売委託するといった手も考えられます。なお、「BCCKS」にはEPUBインポート機能があります。
もっとも、この中で「Kindleストア」「楽天Kobo電子書籍ストア」「iBooks Store」「Google Play ブックス」は自分で直接取引することが可能であり、個別に配信手配する手間を惜しまないのであれば、それ以外の電子書店だけを販売委託する形がいいかもしれません。
「販売委託申込みページ(会員専用)」からは、例えば「でんでんコンバーター」など他のツールで作成したEPUBファイルも送信可能です。特定の電子書店だけ委託したい場合は、メッセージ欄にその旨を記載するといいでしょう。なお、販売委託申込みをボイジャーに送ると、必ずボイジャーからコンタクトがあり、販売先を念のため確認する工程が入るそうです。
各サービスにはそれぞれ得手/不得手や、できること/できないことがあります。New Romancerをどのように活用するかは、あなた次第です。
これはNeuromancer。
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