『月刊群雛』2016年04月号には、新矢イチさんの小説『愛を知らぬ獅子王の物語』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプル・著者情報などをご覧ください。
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作品概要
今より一千と数百年前。人間と動物の間に生まれた種族がかつて存在した。ライオンの血を継ぐ、ラー族元帥のレオンはある日、同種族のスー族を滅ぼすことに決めた。
「これ以上、彼らを弱らせる必要がどこにありますか」「腰抜けが。男が戦わずして何を成せる」
レオンは敵陣の最高司令官、シルバの縄張りを襲撃せんと目論むが――。
―― ライオン擬人化。冷酷な長と心ある部下の話
愛を知らぬ獅子王の物語
今より一千と数百年前。人間と動物の間に生まれた種族がかつて存在した。
ライオンの血を継ぐ種族、ラー族元帥のレオンはある日、同種族のスー族を完全に滅ぼすことに決めた。彼も今年で6歳。この種族の寿命は人間の10分の1に満たない。長く見ても、後2年も生きられまい。純潔の「戦士」の血を絶やさぬためにも、目の上の瘤はさっさとつぶしたほうが良い。
「閣下、彼らは争いを望んでいない。これは無謀な戦です」
「ナルよ、私の右腕が尻込みしてどうする。ありったけの兵士を集めろ、一気に攻めるぞ。われらは敵の最高司令官シルバの縄張りへ向かう。やつは決まった時間に狩りをする。そこが狙い目さ。まずはシルバの子を殺せ。女は生きたまま捕らえろ、人質に使える。組織の中枢さえつぶせば、後は壊滅したのも同然。なあに、簡単な仕事さ」
ナルと呼ばれた男は、抗議の意味を込めて赤い鬣で蒸し暑い空気を振り乱した。
「無意味な争いだ。スー族は現在、われらの支配下にある」
ナルは褐色のからだを揺すって胡座を組みなおすと、金の鬣を持つ、美しく残酷な男を上目遣いに見た。
種族の中で金色の鬣を持つ者は他にいない。皆は彼のことを救世主と呼んだ。
「これ以上、彼らを弱らせる必要がどこにありますか」
ナルが副指揮官に就き1年。ラー族は驚くほど発展を遂げた。誰より信頼のおける人物で間違いないが、人柄ゆえの優しさが、レオンは元来気にくわなかった。戦に情けはいらぬ。ナルには勝利への貪欲さが足りない。
「腰抜けが。男が戦わずして何を成せる」
「有能な仲間が無意味な戦で落とす命の方が、計り知れぬほど重い。そうは思いませんか。私にも、産まれて間もない娘がいる。ここで命を落とすわけにはいかない」
「その暁には俺がもらってやろう。お前の命より大事な、嫁と子を」
「閣下……冗談でもおやめください」
「あっはっは。子を殺せば女は盛る。男を殺せばなお盛る。俺の子孫を孕むころには、お前のことなぞ忘れておるさ」
「貴方という人は――」
野太い尻尾が地面をはたき、室内はとたん、湿った土埃に覆われた。
「その情の深さは命取りだ、気をつけろ。来週の夜には発つ。それまでに準備をしておけ」
※サンプルはここまでです。
作品情報&著者情報
新矢イチ(しんや・いち)
―― まず簡単に自己紹介をお願いします
普段はボーイズラブ小説ばかり書いています。執筆歴は四年目。どうしても小説を書きたくて、転職し現在に至ります。小説の書き方から文章表現などを独学で勉強し、現在は展開手法など勉強中です。今後の成長の糧になればと、この度参加させていただきました。
―― この作品を制作したきっかけを教えてください
『群雛』の雑誌名よりテーマを決めました。どんな大きな敵にも、少数の群れが団結すれば十分戦っていけるのだと伝えたくて、レオン(独裁的な国の長)率いる巨大な軍隊に少数だが勇敢な精鋭たちが立ち向かうお話が作りたかったのですが、結果的に文字数に負け、家臣が一人で暴走する形で終了させてしまいました(このあらすじは本編と全然違うのでご注意くださいませ)。
―― この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください
ヴィクトル・ユーゴー『レ・ミゼラブル』
―― この作品のターゲットはどんな人ですか
酸いも甘いも経験された大人の女性を意識して書かせて頂きました。理不尽な世界でうっすら伝わる愛情を楽しんで頂けましたら幸いです。
―― この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか
ネタだしから執筆、推敲まで3日位。
―― 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか
主に自サイトのトップページにリンクを貼り、お知らせしています。あとはピクシブや検索サイトへ更新の都度お知らせしています。でも一番の宣伝は、自サイトで作品を公開することかもしれません。
―― 作品を制作する上で困っていることは何ですか
思い切った展開が書けません。書き始めた頃のほうが、下手だったけれど自由で「尖った」作品を書いていたように思います。現在は色々勉強する一方、当たり障りのない「柔らかな」、「平たい」ものを無意識に書いてしまう気がしています。あとは遅筆をなんとかしたい。
―― 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください
好みの作家さんは西野花(にしの・はな)さん、ふじみまうすさん、万城目学(まきめ・まなぶ)さん、村上春樹(むらかみ・はるき)さん。
好きな作品は『ノルウェイの森』です。本の中では納まりきらない、読めば読むほど絶望感と孤独しか浮かんでこない凄まじい世界観ですが、それでも生を終える直前まで必死にもがき苦しみ何かを得ようとするキャラクターたちの生きざまが、辛いけれどどこか共感できます。
―― 今後の活動予定や目標を教えてください
3月から新作『元カレ×元カレ』というお話と『食まれる』という浮気物の話の続きを書く予定です。電子書籍も、少しずつ有料のものを出していきたいと考え中です。
―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします
初めまして。最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。大切なお時間を割いてお読みくださったこと、心より感謝いたします。今後も精進してまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。
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