『月刊群雛』2016年04月号には、米田淳一さんの小説『鉄研でいず3』連載第1回が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプル・著者情報などをご覧ください。
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作品概要
女の子だらけの鉄道研究部の活動(鉄道模型づくり・部誌づくり・旅行)を通じて、彼女たちが高校生活を謳歌しながら、物語とは、セルフパブリッシングとは、そしてこの現代に生きていく意味を(実はまじめに)問う作品です。
―― 走り過ぎたテツな女の子たち!
鉄研でいず3
第1話・再び約束の地へ
2016年1月1日、日の出前の暗い東京。
「総裁ー、この日暮里駅で乗り換えですねー」
海老名高校鉄道研究部のみんなが、終夜運転の山手線の電車から日暮里駅ホームに降り立つ。
「さふなり。我が鉄研は、今年のお正月を、あの『約束の地』で迎えるのだ」
総裁と呼ばれた彼女、部長である長原キラは、その機関車の動輪の髪飾りを輝かせて振り向き、うなずいた。
まだ暗い日暮里駅を、みんなは荷物のカートを持って移動している。
「グリーン車乗車位置はもうちょっと先ですー」
案内するのはあまりのハンサムさに男の子と間違われてしまう女の子、鹿川カオルである。
「ホームは走っちゃダメだからねー。ヒドイっ」
そうみんなに鉄道マナーを念押しするのは芦塚ツバメ。
「わかってまーす」
そうみんなが答える。女子ばかりの鉄研(鉄道研究部)なので、揃った声は女性コーラスのように美しい。
「ツバメちゃんのお父さん、今頃終夜運転仕業に就いてるの? 運転士さん、ほんと大変よねえ」
そう聞くのは彼女と一番の仲良しにして天才的洞察力をもつ葛城御波。それにツバメがうなずく。
「ほんと、お疲れ様ですわ。私達はこうしてお出かけだからいいですけれど、本当に鉄道職員の皆様の努力がこうして毎日、日本の鉄道に命を吹き込んでいるのだと思うと、頭が下がりますわ」
武者小路詩音がそう丁寧に労う。
「そう詩音ちゃんに言われると、お父さんも嬉しいと思うなー」
「そうですの? 光栄ですわ」
そう笑う時も詩音はきちんとハンカチを口に添えて歯を見せない。さすがは鉄道工学教授の家の、正真正銘のお嬢様である。
「みんな、ちゃんといるー?」
「2年生はこれで6人全員だけど、1年生3人は?」
「いますよー!」
声が三重奏になる。
「アヤちゃん、髪飾り替えたの?」
「はいー! 総裁に倣ってHOゲージの蒸気機関車のスポーク車輪で作ってみたんです」
「さすが鉄道模型誌掲載常連だけあって、工作が精密で趣味も渋いわねえ。あれ、カナちゃんは」
「え、あ、すみません、行き来する列車の音に聞き惚れちゃってて」
※サンプルはここまでです。
作品情報&著者情報
米田淳一(よねた・じゅんいち)
―― まず簡単に自己紹介をお願いします
YONEDENこと米田淳一です。『月刊群雛』ではいつもお世話になっております。
SF小説『プリンセス・プラスティック』シリーズで商業デビューしましたが、自ら力量不足を感じ商業ベースを離れ、シリーズ(全14巻)を完結させパブーで発表中。他にも長編短編いろいろとパブーで発表しています。KindleストアやBCCKSでもがんばっていこうと思いつつ、現在事務屋さんも某所でやっております。でも未だに日本推理作家協会にはいますし、また、鉄道模型なんかを作るモデラーなこともしています。
今回の作品は、私の鉄道趣味の部分を突き詰めて、私の半生をすべてつぎ込んだ集大成的な作品です。趣味が前面に出ますが、その実私が小説を書いたりセルフパブリッシングをする強い動機を訴える、まさに総力戦の作品です。久々に血吐くまでやろうと思ってます。
―― この作品を制作したきっかけを教えてください
高校時代に実際これにちかい体験をしてしまったことです、といえば驚くかもですが。
―― この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください
ゆうきまさみさんの『究極超人あ~る』などのSF要素を含んだ学園モノに影響されています。ほかにも世の中の私の触れたすべての物語への影響があります。この作品は、それらすべてへの恩返しのつもりです。
―― この作品のターゲットはどんな人ですか
今この群雛を手に取ってくれたすべての方に、すこしでも届くように。
―― この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか
実際の体験からこのシリーズの立ち上げまで24年かかりました。そのための取材と資料整理などに、とんでもなく時間(と地味にお金)がかかってます。
―― 本作は連載ということですが、「エビコー鉄研」シリーズは以前もありましたよね
このシリーズはもともと「小説家になろう」に投入した作品です。
第1部『鉄研でいず! 女子高校生鉄道研究風雲録』は海老名高校(エビコー)に入学して鉄研を創部する新1年生から始まり翌年春までです。
第2部『鉄研でいず! シーズン2』はその彼女たちが2年に進級し、後輩となる新1年生を迎えた新シーズンです。それぞれ13話構成で、各電子書籍ストアに単著として配本しています。
また、月刊群雛にもスピンオフとして2015年12月号『6人の出張』と2016年02月号『もう一つのアスタリスク』で登場しています。
この連載はそのシリーズの第3部になります。群雛掲載の『もう1つの……』は第3部のプロローグにあたります。
さらに『カクヨム』で第4部にあたる『鉄研、バーズアウェイ!』を現在連載中です。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880601740
―― たくさんのキャラが登場しますが、どんな子たちなのか教えてください
リスト形式で。
2年生(今回時点)
・長原キラ:みんなに『総裁』と呼ばれている。「さふである!」とか口調がやたら特徴ある子。
・葛城御波:国語洞察力に優れたアイドル並み容姿の子。でも密かに変態。
・芦塚ツバメ:イラストと模型作りに優れた子。イラストの腕前は超高校級。「ヒドイっ」が口癖。
・武者小路詩音:模型作りの腕前はエビコー鉄研ナンバーワン。身体が弱くて入学を遅らせているので実は2年のみんなより年上。超癒し系。
・中川華子:鉄道趣味向けに特化した食堂『サハシ』の娘。写真撮影と料理が得意。バカにされるとすぐ反応してしまう。
・鹿川カオル:ダイヤ鉄。超頭脳明晰で、鉄道会社のバイトでダイヤを組んでいる。同時にプロ棋士目指して将棋奨励会所属。
1年生(今回時点)
・大野アヤ:模型鉄の子。詩音に匹敵する模型雑誌掲載歴があるほどの技術を持つが、気配りにちょっと問題あり。
・御門マナ:鉄道マニアには珍しいコスプレイヤー。ネットにもどっぷりハマっているさらにオタクな子。
・建部カナ:鉄道趣味はほぼなかったけど、カオルが『王子』と呼ばれるほどハンサムだったのに引き寄せられ入部する。後に鉄道の音に聞き惚れる『音テツ』に進化。アニメ声優っぽい声で話す。
兵庫県在住在学
・田島ミエ:模型鉄。鉄研のない兵庫の高校に在学。総裁と旧知の友人。熱い鉄道愛とガルパン愛にあふれた子。兵庫県からはるばるやってくる。
他に
顧問・副顧問(舘先生)・コーチの3名と、あと、ライバル高校として森の里高校があり、その部長にド金持ちの『扇宮美里』という子がいます。
……うわ、ほんと人数多い。この子たちは連載中に進級して2年は3年に、1年は2年になります。
―― 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか
さまざまなSNSなどの手段を使っています。その結果、よくわからなくて運用しきれないものもあります。
―― 作品を制作する上で困っていることは何ですか
制作にはようやくあまり困らないようになりました。ただ、私はあと何作作品を発表できるだろうかと思うと、とても心細さを感じるようになりました。
―― 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください
群雛に書いている作家に興味を持ってきたのですが、最近はセルフパブリッシングの作家全般に興味が湧いています。
―― 今後の活動予定や目標を教えてください
作品を書くことです。いつまでこれができるかわからないので。
―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします
読んでいただいた方、ありがとうございました。
これからお読みになる方、よろしくお願いします。
米田淳一さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2016年04月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。
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