『月刊群雛』2016年07月号には、儚月響さんの小説『量産型女子大生』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプル・著者情報などをご覧ください。
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作品概要
ある日突然、自分の存在意義に疑問を持ち始めた女子大生、天音京華(あまね・きょうか)。彼女は意外な手法で自分の個性を主張し始める――
―― あたしはクローン人間じゃない!
量産型女子大生
被ってしまった、服が。
親友(と、あたしが勝手に思い込んでるだけかもしれない)の朋美と服が被ってしまった。
すり鉢状の広い講義室の中で、お互いの姿を見て吹き出してしまった。
ふわっとした茶髪の前髪、白黒ボーダー柄のワンピース、黒のセーター、なんで靴と靴下まで被ってんの?
二人で一緒にセルフィーを撮ってインスタグラムに投稿した。
写真につけられたコメントを見てドキッとした。
「量産型女子大生w」
意味がわからないので画像をググってみた。
まったく同じ色の茶髪、同じ髪型の女子大生が五十人くらい集まってセルフィーを撮ってる写真を見つけた。「しめじw」と揶揄するコメントがついてた。
うん、確かにこれは変だ。スーパーの野菜コーナーに並んでるしめじにそっくりだ。没個性にもほどがある。
スマホの液晶画面に並ぶ量産型女子大生の写真を見ながら、急に不安になった。あたしって誰? 自分が働きアリの一匹になった気がした。
大学生になったのに、私服が被るなんて、そんなことある?
世の中に洋服なんて、何千何万と無数にあるのに全身コーディネイトが被る確率ってどれくらい?
服が被る確率なんて、サマージャンボ宝くじの一等に当選するよりも低いんじゃないの?
自分ってなんだろう? アイデンティティーはどこにあるのだろう?
このまま簡単に交換の利く部品として社会に出て、市井の名も無き人として埋もれて生きていくんだろうか?
そう考えるとゾッとした。誰でもない私。クローン人間の私。突然消えても誰も気づかない私。
明日は学園内の他の誰とも決して被らない服を着て大学に行こう。
タンスの中を漁る。そして見つけた。他の誰とも決して被らない服。
これを着て渋谷に行くならまだ抵抗はない。でも、これを着て大学の正門をくぐるのには勇気がいる。
※サンプルはここまでです。
作品情報&著者情報
儚月響(はかなづき・ひびき)
―― まず簡単に自己紹介をお願いします
愛とエロスを探求し続ける放浪の旅人。
酒とクルマと女のこと以外なにも考えてない。
前世はきっとイタリア人。
ホームページを開設しました。レトロ調でありながら、一周まわって新しいホームページを目指しました。お越し頂けると嬉しいです。
『Oracle182 儚月響のホームページ』
http://oracle182.x.fc2.com/
プロフィール画像は『ジュエルセイバーFREE』のフリー画像を利用しています。
http://www.jewel-s.jp/
―― この作品を制作したきっかけを教えてください
量産型女子大生の写真を見たときの違和感から。
集合写真では誰もがみな同じ髪色・髪型・メイク・服装をしており、ポーズまで同じ。
生理的に何か受け付けないものを感じた。
―― この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください
ジョージ・ルーカス監督の長編デビュー作『THX 1138』のディストピア的未来観。
フランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスが設立した映画製作スタジオ『アメリカン・ゾエトロープ』で制作された実験映像的作品。
いま観てもカッコイイのだけど、難解なテーマとカタルシスのない物語展開に興行的には失敗した作品。カルト的人気を持つ。
―― この作品のターゲットはどんな人ですか
どういう人達が群雛を読んでいるか判らないし、そこから更に細分化するのも無理があるので特にターゲットは決めていません。
―― この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか
夕方6時から午前0時くらい。
―― 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか
ホームページ、ブログ、Twitterです。
―― 作品を制作する上で困っていることは何ですか
制作する上で困るような要因は一つずつ排除していったので、今はありません。
―― 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください
パオロ・バチガルピ著『ねじまき少女』
ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞・キャンベル記念賞を軒並み受賞した正統派SF小説。
石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコクを舞台にアンドロイドの少女と人間の恋が描かれる。
―― 今後の活動予定や目標を教えてください
あまり目標は決めず、ここ二年間はほぼ毎日、小説を書いて過ごしてきました。それをこれからも続けられたらいいな、と思います。
―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします
群雛に書かせて頂いたのも何かの縁と思います。よろしくお願いします。
儚月響さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2016年07月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。
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