『月刊群雛』2016年07月号には、菊地康之固有正弦波さんの小説『バニーさんコンプレックス』が掲載されています。これはどんな作品なんでしょうか? 作品概要・サンプル・著者情報などをご覧ください。
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作品概要
部員一名のおれの部室のドアの前にダンボールが置いてあり、そのダンボールの中にはバニーガールが入っていた。おれは他の連中に見つからないように、バニーを部室の中に連れ込んだのだった!
―― ウサ耳の彼女は、君を待っている。
バニーさんコンプレックス
うだるような暑さの中。額の汗を腕で拭きながら、学校本館の渡り廊下を歩いて部室棟へ行くと、我が部室の前にダンボールが置かれていた。その大きなダンボールは上部が開いている。そして、ダンボールの中には可愛らしいバニーガールが入っていた。網タイツにレオタード。ウサ耳にしっぽ。顔はアイドルグループにいてもおかしくないレベル。
バニーガールは首から、
「私は捨て兎です。拾って下さい」
と書かれた木製プレートを下げていた。おれの所属する『ヘゴブロック同好会』のドアの目の前でダンボールに詰まったバニーガール。艶めかしい。夏の見せた幻影か。
幻影……、バニーガールはしゃべりだす。祈るようなポーズで。
「私はバニーガールさんなのです。誰も拾ってくれないのです。私のをいっぱいいっぱい使って下さるとうれしいので……んげふぅッ」
おれは思わず鳩尾にパンチを入れて、卑猥なことをしゃべり出しそうなその口を強制的に黙らせた。新手の刺客とみて良いな?
「ふぅ……」
刺客を仕留めたおれは、額の汗を拭く。暑くて目眩がする。
しかし、これはまずいぜ。紳士的なおれはともかく、他の男子生徒、即ち野獣先輩どもの手にこのバニーが渡ると極めてデンジャーだ。ふむ。おれが手厚く保護しよう。
そう決めたおれは、バニーガールファッションの小娘をダンボールから拾い上げ、我が部室に招き入れることにした。
「あなたはブロック遊び大好きさんなのですね!」
絶対に引かれて冷たい目で見られると思ったら、意外にヘゴブロックに食いついてきたこの小娘。当然と言えば当然か。ヘゴブロックは、頑張れば大体の物は再現出来てしまう高性能の、魔法のブロック型玩具なのだから。そこら辺のプラモデルになんぞ負けん。
ヘゴブロック同好会、部室。
部員はおれ一名で運営している。
ふふん。一人で運営してるなんてすげぇだろ。
クーラーの音がブウウウゥゥゥンと響く。
そんな我が部室内では、無理矢理連れ込んだ(と言うと語弊がある)バニーガールがヘゴブロックに首ったけになっていた。
バニーが前屈みになって、おれがつくったティラノサウルスのブロックに見入る。
見ているバニーの方を向くと、目のやり場に困ってしまい、おれは挙動不審に目を泳がせた。
前屈みの時の胸元を見たら何やら見えてしまいそうだし、屈んだ後ろ姿に目を移すと、バニーのしっぽがちょこんとはえてる、強調されたお尻を見ることになる。
正直言って、ドキドキする。
目を泳がせながらも、目をそらすことが、おれには出来ない。
うちの学校全体を考えても、このおかしなバニーガールの美人さは群を抜いてトップクラスだった。アイドルみたいなツラしてんだもん。
いや。
そもそもこいつ、うちの学校の生徒なのか?
※サンプルはここまでです。
作品情報&著者情報
菊地康之固有正弦波(きくちやすゆきこゆうせいげんは)
―― まず簡単に自己紹介をお願いします
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(@mejamoo)ペンギンディスコ
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◆はてなブログ:ペンギンディスコ戦記(改訂版)
http://penguindisco.hatenablog.com/
―― この作品を制作したきっかけを教えてください
サイエンスフィクションの作品をつくろうと思ったんです。考えていたら『DAICON4』(だいこんふぉー)というショートフィルムにぶち当たりまして。それはバニーガールが大活躍するSFアニメなんです。「SFといえばバニーガールなのか。逆にバニーガールを出せばSFなのではないか」という謎の仮説に取り憑かれ、気づけば完成していたのがこの作品です。
―― この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください
本文中に梶井基次郎(かじい・もとじろう)の『檸檬』の話を出したのですが、梶井の『城のある町にて』は、大正十三年八月に『スケッチ』されたといわれています。また、件の『檸檬』にしても夏の香りがふんだんにする作品です。梶井の『スケッチ』は、季節を香りごと閉じ込めて、生きる証としたように思います。文学同人活動をするなら、切っても切り離せない存在が梶井基次郎であり、また彼の病との戦いの中スケッチされた青春は、僕の創作の根底にあります。短編、掌編を書くなら絶対に読むべき作家ですよ。僕は大好きです!
―― この作品のターゲットはどんな人ですか
僕の欲望がストレートに反映された作品になったと思いますので、作者の心理面を読むという、オーソドックスな読書をする人にもうってつけです。ライトノベルが好きな方にも。
―― この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか
一カ月かかってます。途中ぎっくり腰になり、弱音を吐いていましたが、どうにか書けました。
―― 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか
noteです。読んで下さっている方が多いので。
―― 作品を制作する上で困っていることは何ですか
肩こり、腰痛、眼精疲労で困っています。それらに効くビタミン剤などを摂取して、症状を緩和させようとしています。が、飲み薬なのですぐに効き始めるというわけでもなく。歯がゆい日々を送っているところです。
―― 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください
なもり先生の『ゆるゆり』を読んでいる時間が至福です。
―― 今後の活動予定や目標を教えてください
noteのショートショートフェスティバルというものに参加し、先日、そこでつくった同人誌が届きました。僕もそこで二作品、書いてるんです。noteのタグ検索で『#第一回noteSSF』を辿れば、全作品読めますよー、って、それ僕の宣伝というわけではないですけどね。
https://note.mu/hashtag/%E7%AC%AC1%E5%9B%9EnoteSSF
―― 最後に、読者へ向けて一言お願いします
小説を読む、とは受動的なものではありません。読むという行為はとても能動的なものです。とても、パフォーマティヴ。だから、本を読むことに誇りを持とうと僕は考えているし、みなさんも誇りを持っていいんです。たとえ今読んだ作品が僕の『バニーさんコンプレックス』という、作者の欲望が垣間見える作品であったとしても。
菊地康之固有正弦波さんの作品が掲載されている『月刊群雛』2016年07月号は、下記のリンク先からお求め下さい。誌面は縦書きです。
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